.01-7
















「おう、早かったな。道、迷わんかったか?」

社はそう言って玄関に散乱している靴を蹴飛ばしてスペースを作ると、僕に中へ入れと顎でしゃくって促した。
彼が今蹴飛ばした靴たちの中に──進藤の靴らしきものがない。
不安になって、中へ入る前に思わず訊ねる。



「進藤は」
「ああ、今おらん」
「いない!?」



自分でも驚く程の大きな声が出てしまった。
日曜日の昼過ぎということもあってか、社は慌てて玄関の外をキョロキョロと見回した。
そうして僕を無理矢理玄関先へ引っぱり込むと、ドアを慌てて閉める。


「アホ! あんま大きな声出すな!
 日曜の昼や! お隣もおるんやで!
 安普請なんや、そんな大きな声出しとったら、全部筒抜けやで」
「進藤はどこだ!
 今日はいると言ったじゃないか。何故いない!
 進藤を出せ!!」
「だーかーら! 大きな声出すな!!」


社と面と面を突き合わせ、睨み合う。
フンっと社の荒い鼻息が僕の顔にかかる。
大きな声を出しているのは、そっちじゃないか。僕の苛々も頂点へと駆け登っていく。


「…ったく。来た途端これや。
 そんな始めからケンカ腰じゃ、進藤また逃げるで」
「──」
「だーかーら! 冗談やって!
 そんな絶望のどん底みたいな顔すな!
 ……今、ちょっとおらんだけやって」

いない? 何故? どこへ行った。
今日僕がここへ来ることは知っていたのだろう。
わかっててどこかへ行ったのか。わかっていたからどこかへ行ったのか。


「…また。そんな鬼みたいな顔すんなや。
 アイツさっきまでおったんやけど、腹減った言うて、知らんうちに出ていってしもうてな。
 たぶん近所のコンビニやろ」


















これか。社の言っていたコンビニは。


家でのうのうとお茶を飲んで待っている気にはなれなかった。
もし帰って来なかったらどうする?
そう言うと社は、そんな訳あるかアホ! と言って人の頭を叩いた。
ツッコミだかなんだか知らないが、失礼なヤツだ。
とにかく、ここまで来てじっとしていることなど出来るはずもなかったのだ。




コンビニの中に入って探したが、進藤を見つけることは出来なかった。

ここには来ていないのだろうか。それとも行き違ってしまったのだろうか。
初めて来た街だ。これ以上ウロウロしていると、僕まで迷ってしまう。
一旦社の家に戻った方がいいだろうか。





何故。
何故ここまで会えないのだ。すぐ側にいるのに。
まるで神様に「会うな」と言われているかのようだ。



会うな。

何のために?




冗談じゃない。
進藤はいるんだ。ここにいるんだ。
まだ消えてはいない。
消えてなどいない。
消してなどなるものか。


進藤。

進藤。

進藤。


「進藤」


進藤。

進藤。




「進藤」

「進藤」


進藤。




「進藤」

「進藤」

「進藤」
「進藤」





「進藤」












「進藤!」

























「………塔矢?」















コンビニの袋を右手にぶら下げた彼は、小さな公園の小さなブランコの上に、ユラユラと揺れながら座っていた。








北斗杯が終わってから、2週間が過ぎていた。

 
























to be continued