「………塔矢?」



















「じゃあまたな」と言って別れた北斗杯。その次の日からいなくなった進藤。
会うのも、顔を見るのも、声を聞くのもそれ以来だった。
2週間ぶり。正確に言うと、16日ぶり。

今まで、もっと会わない時期なんてザラだった。むしろそのことの方が多かった。

でも。
でも今回は。


まるで何年も会っていなかったような。







遠くで子供たちの遊ぶ声が聞こえる。
布団を叩く音。
誰かが電話で話す声。
近所の家から漏れ聞こえるテレビの音。
台所の音。




初夏の風に吹かれ、ざわざわと公園の木が音を立てて揺れる。






キイ、キイ。


進藤の座る小さなブランコが、小さな錆びた音を立てていた。




























innocent world


act.02








































「よう。何してんだあ、お前」

こんなところで。
そう言って彼はコンビニの袋の中をゴソゴソと探り、ペットボトルの蓋を開けた。



何してる?
こんなところで?

何してるだと?
僕が。ここで。何をしているかって。
何を。


あまりの彼の言い種に、ショックなのか呆れ果てたのか、声が咽にはりついて上手く言葉がでない。
言いたいことは山程あった。
まず会ったら何から、どれから、どう順序づけて言うべきか。
言いたいことが、言わなければならないことが多すぎて、前もって整理しておかなければならない程だった。
彼は元々人の話を聞いているようで聞いていないような(でも本当は聞かなくていいことまでしっかり聞いているのだが)態度をとる癖があるから、そんな態度をとる余裕すら持たせないように、順序付けてこと細やかに且つ分かりやすく、そしてぐうの
音も出ない程に、今日という今日こそは言いたいことを言ってやる全部言ってやる余すことなく言ってやる。

そう心に決めてきたのに。
昨日の晩から、ずっとずっと、新幹線の中も社の家に行くまでの大阪での道中でもずっとずっと、考えて考えて暗記して復唱すらしてきたというのに。






それをたった一言で。
ぐうの音も出なくされたのは、僕の方だった。



唯一、かろうじて出た言葉(というか声)は。





「ふ」
「ふ」

「…ふ?」





「ふざけるなあっ!!」











遠くの方で、カアカアとカラスの鳴き声が聞こえた。