06-04





「4年前、塔矢先生との対局の後に姿を消してしまった。
 今も現れない。
 オレが一つだけ分かって──イヤ、確信しているのは、
 saiとお前がどこかで繋がっているということだけだ」

「…──」

「オレは、saiと打ちたい」



月の光がオレ達を照らす。
月は変わらない。
4年前のあの日も。
そして今日も。
変わらずオレを照らし続けている。


「進藤」
「……いないよ」
「何?」

オレは静かに黒石を手に取ると、碁盤の上に置いた。
石の音が響く。

「アイツはいないよ。もうココにはいない」
「……」
「でもいる場所はわかってるんだ、オレは」

オレがそう言って碁盤から顔をあげ笑うと、緒方さんは眉間に皺を寄せムズカシイ顔をしてオレを見ていた。

「……いる場所がわかっているのなら」
「『あの世界』に」
「は?」
「アイツは今、オレの行きたい『あの世界』にいる」

緒方さんはますます眉間に皺を寄せる。
オレの言いたいこと、伝わるかなあ。




「今のオレじゃ、行けないところなんだ」
「……遠いのか」
「うん。すごく遠い」
「……海外か?」
「もっともっと遠い」


「でもオレは行くよ。そう遠くない未来に」




アイツに会いに行く。

そう決めた──イヤ、決めていたんだ、オレは。最初から。

















「やっぱりな」
「…何が?」
「やっぱりお前は、肝心な事は何も言わないんだな」


緒方さんは諦めたようにため息と白い煙を吐き出すと、椅子の背もたれに深く背を預けた。



「何でだよ。オレ、今すごーく色々正直に喋ったのにさ」
「結局saiの居場所は教えられないんだろう」
「言ったじゃん。オレの行きたい所にいるんだってば」
「……お前はそこに行くと言ったな」
「うん」


「──オレは
 オレは、そこに行くことは出来ないのか?」


緒方さんは夜空を見上げながら小さな声で独り言のように尋ねた。







「……緒方さんは……
 緒方さんも、そのうち行けると思うよ。

 でもオレの方が先に行く。

 アイツには、オレが一番に会うんだから」










フン、と緒方さんはいつものように鼻で笑うと、背を起こして再び白石を持った。



















「相変わらず」



「え?」











緒方さんは碁盤を見ながら、再び独り言のように呟いた。















「相変わらず残酷なんだな、お前は」