|
08-05
どこまで走ってきたのだろう。
よくわからないや。
寒い。
そういえば、今日は今年一番の寒さなんだっけ。
オレ、上着も着ないで……
吐く息が真っ白い。
手もいつの間にか真っ白になって震えてる。
寒いな。
塔矢。
『そういう運命だったら受け入れるしかねえだろ。
オレたちは生きているんだから』
『いつまでも昔と同じままじゃ、いられないからね』
『塔矢くんもさ、ホラ、今日お見合いだっていうじゃない。
キミもいつまでも塔矢くんと一緒に暮らしてる場合じゃないよ』
『いいか、必ず時間を作って来るんだ。……なるべく早く』
『来週また来てください。
その時には、ご両親も一緒に──』
『進藤』
『何故僕たちはずっと一緒にいられない?』
『キミがずっと僕の傍にいてくれることの方が、ずっと大事なことなんだ』
『ずっと一緒に』
『ずっと一緒に』
『ずっと一緒に』
ヒカル、ずっと一緒にいましょうね。
「進藤!!」
突然大声で名前を呼ばれ、オレは強い力に引っ張られて我に返る。
は、と気が付いて後ろを振り向くと、車がけたたましいクラクションを鳴らしながら十字路を猛スピードで通り抜けていった。
「十字路のど真ん中で何やってるんだ! 危ないな」
「………」
頭上から振る、聞き覚えのある声に驚いてオレは思わず顔を上げる。
そして、それはさらなる驚きに変わる。
だってそこに居たのは。
今ここにはいないはずの人で。
「そこのコンビニから見てたんだ。
進藤によく似た人が歩いてくるなーって思ったら、イキナリ十字路のど真ん中で立ち止まって。
驚いたよ」
「………」
「それにしても、まさか今日こんなところで会えるなんて!
本当は明日にでも連絡しようとは思ってたんだけど」
「………」
「……ていうか…
どうしたんだ? こんな時間に、そんなカッコウで」
背の高い、逞しい腕。
綺麗に切りそろえられた、短い黒髪。
細い、でも優しさを含んだ鋭い目。
低い、優しい声。
何で……?
「……秀英?」
to be continued
|