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皆様こんにちは! 執筆人くりです。
今回は前回にお話した第2部、act.07と08の続きであり、innocent第2部の大きなクライマックスとなった章act.09をお話したいと思います。
act.08の最後に登場した秀英からスタートするact.09。
秀英、永夏、そしてヒカル。
3人には過去に思いがけない関係があった。全ての始まりは2004年の第2回北斗杯が行われた時のこと──……
……という、秀英から見た視点と、永夏から見た視点で語られる“韓国編”。
原作では僅かしか登場せず、その魅力が思うように伝わらなかった高永夏に、私の「脇役設定捏造計画」が作動(笑)
彼のキャラが深まって行くと同時にお話もどんどんと深くなってゆき、気が付けば韓国編だけで全部で20話もあるという……巨編になってしまいました(笑)
小説を書いていく上で、我ながら予想外の出来事が多数起きたり、『ヒカルの碁』という原作が持つ、アキヒカ以外の脇役の魅力を思う存分知ることになった、なかなか思い出深いactでもあります。
そんなこんなで、シリーズでも1,2位を争う最長のact.09のお話をボチボチしていこうと思います!

タイトルは『OUR LAST DAY』。
直訳すれば内容はわかりやすいんですが、由来はわかりにくいですね。
これはact.09を書き始めた当時の話題になっていたトンデモ映画『CASSHERN 』のサントラのタイトルから頂いたんですよ。
OUR LAST DAY。
僕等の最後の日。
秀英に連れられて、彼の叔父さんの家に行くヒカル。
秀英のキャラは、悩まずにすんなりと出来ました。
誰に対してもすごく優しいし(特にヒカルに)基本的にはおぼっちゃまタイプなんだけど、ストイックな男っぽさもある。
自分を高めるために凄く努力したり、進んで兵役に参加しようとしたり。要は、とても真面目な子なんですね。
なんていうかねー…、私、韓流ドラマ?って全然観たことないんですけど(笑)、そういうドラマに出てくる男性キャラのイメージ?みたいな(笑)
ホラ、なんか韓国の俳優さんって、みんな身体も鍛えてるし、優しそうじゃないですか(笑)あんなイメージなんです。
涼子と話していたのは、「innocentの秀英のモデルはパク・ヨンハさんかな?」と(笑)
す、すみません!!! ドラマ観たことないのに!!(笑)
とにかく秀英は、後に出てくる永夏と常に一緒に行動をすることが多くなるキャラだったので、永夏とは極力反対の性格にしたかったんです。
永夏がボケなら秀英はツッコミ、みたいな(笑)
まあでも、このact.09-1を書いている時点では、永夏の性格をバッチリ決めていたワケでもなかったんですけどね(笑)
そしていよいよ登場した高永夏。
原作では超ビジュアル系(笑)で登場したにも関わらず、あっという間に出番を終えてしまった永夏。
そんな彼の性格や囲碁のスタイル、ものの考え方など、僅かながら描かれたものの、私達FANが堪能したり萌えたりする前に原作が終わってしまいました。
な……なんて勿体ない……!!(←主婦)
こんな超超超超超ビジュアル系のキャラなんて、少年マンガ誌でも滅多に生まれることなかろうに…!
それを、たったアレだけの出番で終わらせてしまうのは勿体なさ過ぎる……!!!!!
……ということで。
ここで再び私の「脇役設定捏造計画」が超作動(笑)
以前のプロダクションノートで「緒方が一番細かい部分まで設定が決まってる(というか捏造した)」と書きましたが、高永夏もそれに匹敵するくらいの捏造っぷりですね。
ですが、そんな彼の設定は、私自身も完全に決定した上で書いていったワケではありませんでした。
本編更新の締切が押し迫っていたために、あまりキャラを作り込んでいるヒマがなく、本編を書きながら考えていったんです(笑)
だから私が当初意図していた永夏の性格と、実際に出来上がった永夏の性格はかなりギャップがあるんですよねぇ…。
本当は、もっともっともっと不遜でエラそうなキャラにしたかったんです。
act.09-1.9-2でたまりかねた永夏はヒカルを襲っていますが、アレをもっとキツくしたキャラにするつもりだったんですよ。
永夏→ヒカルという構図は連載前から決めていたのですが、ヒカルに対して、アキラ以上に「独占欲」の強いキャラにしたかったんです。
(そもそも何故永夏→ヒカルという構図にしようと思っていたかというと、ヒカルにとって「初めての人」がアキラ、というアキヒカ界では当たり前な感じの設定が嫌だったんですね。で、誰がいいかなと考えていた時に、私の中で「永夏リサイクル法」が立ち上がったと(笑))
とにかく永夏→ヒカルの関係というのは、
もう抱いちゃったら朝から晩まで、ヒカルが泣こうが何しようが離さないとか。(しかも強引系)
そしてそんな風に拘束されたり傷つけられることに、ヒカルもちょっと喜んじゃったりして。
……みたいなね(笑)今のinnocentからは考えられないくらいの、アダルティーな展開を目論んでいたんです(笑)
だから当初、私と涼子は「韓国編」のことを「ラマン(愛人)編」と呼ぶくらいだったんです(笑)
んで、その目論見はact.09-1.9-2まで続いていたんですよ! 私の中で!!
なのに……1.9-3で秀英がガツンと永夏を殴ってしまったところで……秀英の生真面目パワーが、私の中のアダルト永夏を浄化し永夏のキャラを180度変えて、一気にact.09-2.1から「リリカル永夏の純愛物語」へと路線変更してしまった……という……(遠い目)
私の「innocentラマン計画」の野望はココで簡単に潰えたのでした……(笑)
そこから先(act.09-2.1)の永夏ときたら兎にも角にもリリカルで(笑)、不遜でエラそうな態度どころか、「人を好きなることを知らなかった」自分に対して劣等感を感じ、ヒカルに対して行ってしまったことを猛省し、それでもヒカルが好きな自分を自嘲しつつも、ヒカルに少しでも振り向いてもらうために必死になって日本語を勉強し、たった一人で日本にも訪れ、死にものぐるいで受験勉強をしてソウル大学へ進み、さらには無理矢理北斗杯の団長になって、ヒカルと対局することを、ヒカルの傍にいることを望む。
そして2006年12月には、叔父の家に遊びに行く秀英に無理矢理同行して日本へと来るのです。
ただもう一度、ヒカルに振り向いて欲しい。それだけのために。
………。
……………。
な……なんてリリカル……!!
なんて乙女チック……!!!
なんで「少年マンガ希有の超絶美形キャラ」が「少女マンガにありがちな片想い純情キャラ」になってしまったのか…(遠い目)
自分で自分がわから……な……
というようにですね、act.09の主役とも言えるキャラ高永夏の、思いがけないキャラ路線変更により、私の中で予定していた韓国編は大きく大筋がずれていってしまい、かーなーり大回りの蛇行を繰り返して、漸く2006年12月(act.09-3)へと戻っていくのでした。
ちなみに、ここへと戻るために要した月日はナント5ヶ月弱!!(笑)
しかしこの半年という時間をかけて永夏、そして秀英というキャラを本編を書きながら練り込んでいったせいか、彼ら二人は読者様に大変に人気のあるキャラへと成長し、「もうアキヒカじゃなくてヨンヒカでいいです」「もうヒカル、永夏でいいじゃん」とまで読者様に言わしめたキャラへと成長してくれることとなりました(笑)
私の大いなる野望「innocentラマン計画」は頓挫したものの、「永夏リサイクル法」だけは成功したかな……と今では思います(笑)
……というワケで、そんな高永夏の制作秘話を踏まえた上で、act.09の内容を少しずつ振り返ってみることにしましょうか(笑)
act.09-1.1〜1.9-3まで、秀英視点でお話が進みます。
なんと恐ろしいことに、1.1、1.2、1.3…と小数点でお話が進んでいくという(笑)
長い間innocentにお付き合いいただいた方はお気づきでしょうが、各actごとに、一応「主人公視点」があります。
要は、アキラかヒカルか。act.09でいえば、一応ヒカル視点なんですね。で、そのヒカル視点でない時は小数点になる、という。
act.01ですでにそのスタイルが出来ていた(act.01-5.5)ので、それをずーっと踏襲していたのですが……
act.09になって韓国編を書いている時ほど、このルールを作った自分を呪ったことはなかったですね(笑)
主人公であるはずのヒカルがほとんど出てこず、秀英と永夏の視点がほとんどを占めるという(笑)
秀英パートに至っては、小数点ごとに進んだにも関わらず話数が足りなくなってしまい、「ヒカルと秀英の話」「ヒカルが永夏宅に行った話」というので無理矢理ひとくくりにして「1.8-1、1.8-2、1.9-1、1.9-2、1.9-3」という……みっともないことになってしまいました。
私の計画性のなさが伺えますね(笑)
秀英視点の話がこんなにも書きやすく、そしてこんなにも膨らむとは思ってなかったんですよ。
書けば書く程、優しさを持つ秀英視点は面白くて、特に彼が永夏のことを語る話(act.09-1.1、1.2)は楽しかったですねえ。
全部書きながら設定は考えていったんですが、筆が止まってしまうことはありませんでした。
永夏がヒカルに惹かれることは最初から決まっていたので、永夏が「人に興味を持てない」「恋愛をすることが出来ない」キャラにしたかったんです。
その方が、「恋をしたことがなかった永夏」が「(よりによって)ヒカルに惹かれてしまった」時の衝撃度(永夏自身と読者様に)が大きいと思ったので…。いかがでしたでしょうか。
で、その永夏が「恋が出来ない理由」ももちろんきちんと付けたかった。
「過去に恋愛でトラウマがある」「大切な人を失ったから…」というような一般的な理由がとてもじゃないけど当てはまるビジュアルじゃなかったため(笑)、「優秀&美形過ぎて、求められることはあっても、自分から人を求めたことがない」という理由にしました。
でもこの設定は我ながら彼にハマったような気がしていて、この性格付けが先に出来たので、彼を書いていくのはとても楽になりました。
んで。
お話は秀英の回想から原作終了から1年後の、第2回北斗杯へと続いていきます。
各北斗杯の描写はact.01-1で書いていました。ただ、コレを書いた時には、まさか1回〜4回まで、すべての北斗杯を書くことになろうとは思ってなかったので、後々この時の設定に私は大いに苦しめられることになるのでした……(笑)
第2回北斗杯でのヒカルの不調。
これは、この大会の直前にヒカルは自分の身体のことや残された時間の短さを知っているんです。
なので、実際にあまり具合が良くないのと、精神的に少し参っているのと、5月ということと。
とにかく、ヒカルを不安定な状態にしたかったんですね。
そんな状態だからこそ、act.09-1.5で永夏に名前を呼ばれただけでグラッと来るワケで。
そしてそのact.09-1.5。涼子に「秀英は『家政婦は見た!』状態だね」とか言われて爆笑された話(笑)
わ、笑うような話じゃないのに(笑)
これはねえ……苦労しましたねえ……(遠い目)
この話を書くまで、永夏とヒカルは直接話すシーンを書いたことがなかったんです。
だから、この二人が言葉が通じないということをすっかり失念していたんです(笑)
「……あれ? この二人、何語で話すの? 宇宙語?」
みたいな(笑)
……今思えば当たり前のことのはずなのに、当時の私には衝撃的でしたねぇ。
何で気が付かなかったんだろう(笑)
とにかく普通の会話が出来ないし、かといって通訳・秀英を今後もずっと挟むワケにもいかないし(笑)
でも幸い、永夏もヒカルもかなり人の話を聞かなさそうな勝手な性格なので、各々喋らせておけば雰囲気で通じることがあるかも……という……ほぼ、ぶっつけで書くことになりました……(遠い目)
いくら言葉が通じないといえど、あまり回りくどい会話にしてしまうと読むのが嫌になってしまうし、心を読みすぎる会話も変だしね。
なので、会話のリズム感を失わず、そしてご都合主義みたいな会話になり過ぎない(多少はしょうがない・笑)ようにと思いながら書き進めました。
でも逆に、言葉が通じないことで緊張感が出たし、「韓国と日本」というような距離感?みたいなものも少し表現出来た…ような気がするので、結果的には良かったのかなと思っています(^^)
「永夏の声が佐為の声と似ている」という設定。
永夏がヒカルに興味を持つのはともかく、ヒカルが永夏に激しく惹かれる…という理由が欲しい。
ただ「碁が強い」というだけじゃ、アキラがいるしね。ではどうするか。
そう考えた時に思いついたのが、「佐為と声を似せるというのはどうか」ということでした。
innocent全体にかかる大きなテーマとして「呼びかける声」というものがあります。
本編全編を通しても、アキラが、ヒカルが、相手に対して「ねえ、○○」と呼びかけているシーンは数え切れないくらいあると思います。
お気づきの通り、これは原作の最終回「あなたに呼びかけている」というタイトルから頂いたテーマなんです。
で、ヒカルにとって「呼びかけられる」ということ。
彼は佐為に呼びかけられたからこそ、今の自分がいるんですね。(act.11-1)
命を与えてもらった自分、碁と出会うことが出来た自分。
そしてヒカルを「ヒカル」と呼ぶのは、両親とあかりを除けば佐為だけだった。
だからヒカルが「ヒカル」と名前で呼ばれることは、彼にとってとても大事なことなんです。
なんていうか、そこに彼の琴線がある、というか。
そして自分が今、不安定になっている時に目の前に現れた男、高永夏。
彼は佐為とよく似た声で、自分のことを「ヒカル」と呼んだ。
まるで佐為が帰ってきてくれたかのように、優しい声で自分の名前を呼んでくれたんだ。
これはもう、ヒカルがグラリと永夏に傾いてしまうには十分な理由じゃないでしょうか。
いかがだったでしょうか。
私的には、ここのポイントとしては、木の影でジッと堪える秀英なんですけどね(笑)
堪える秀英、というのは私的に「超萌えポイント」でして、act.09の前半はそれが一番書いていて楽しかったですね(笑)
ヒカル in 韓国。(act.09-1.6〜1.9-3)
ここの最大の目的は、「人を好きなったことがなかった永夏がヒカルに恋をし、暴走してしまう」というものでした。
もう、歯止めのきかない永夏が書きたかったんですね(笑)
これを書いていた頃はまだ「ラマン編!」と意気込んでいたので(笑)
秀英のお家の描写をサラリとしていますが、彼は「おぼっちゃま」という設定にしています。
原作での、幼い頃の「気が強いけど純粋」なところと、innocentでの「優しさ」や「真面目で努力家」なところ。
これはもう、お育ちの良さから来ているんじゃないかと(笑)
なので、ソウル市にある大きな家に住んでいるという設定にしています。
永夏の方は、原作にもチラリと彼の自宅の描写は出てきましたね。(20巻)
それを踏まえて、ソウル市内のマンション住まい。留守がちな両親と3人暮らし。
お姉さんはすでに結婚していていない、と。そんな設定にしました。
なので、永夏は昔から秀英の家に入り浸る傾向が(笑)
お金持ち&家が広い&努力家なので、囲碁の本も種類・冊数問わずたくさん持っていそうだしね。
それを目当てで秀英の家によく行っていた、という裏設定もあります。
このact.09-1.6〜1.9-3のテーマは「恋と友情の間で揺れる秀英の恋心」と「恋は盲目状態で突っ走る永夏」(笑)という対照的な二人を描くことでした。
永夏も好きだけどヒカルも好きな秀英。どうしたらいいのかわからない彼は、目の前でどこか儚げな様子のヒカルに、ただ優しくすることしか出来ない。
この秀英の優しさに惹かれて、ヒカルはact.09-1.8-2でかなり重要なことを喋っています。
これは、今の段階で話してしまうのは、私的にはかなりフライングだった(笑)のですが、ヒカルが秀英に話したがっていたので、話させてしまいました(笑)
そしてヒカルは永夏の家に訪れて、自分の名前を呼ぶ永夏に佐為を見る。
そのことがショックで永夏を拒否するヒカルだが、永夏は逆に暴走してしまう。
ここの、「永夏の自宅で『G線上のアリア』が流れている」という設定。
これは、act.03-9からのLinkであり、オフ本『innocent world others』からのLinkですね。
プロダクションノート1でも少しお話しましたね。
ただこの『others』での永夏とヒカルの話、本当はこのact.09-1.9-2をマンガと同じ話にしたかったのですが、結局雰囲気と『G線上のアリア』というアイテムだけが一緒で、あとは全然違う話になってしまいました(笑)
これは何故かというと、この『others』のネームを描いた時(2003年の夏頃)は「act.09はラマン編!」と思っていたので、永夏とヒカルの関係も色っぽいテイストになっているんです。
だけど実際に本編が追いついて小説にしてみる(これを書いていたのは2004年の秋頃)と、「ラマン編」ではなく「リリカル編」になってしまったので、アイテムだけ踏襲して、あとはキャラも話も全然違うものになってしまったんです(笑)
うーん、『others』をお持ちの方は、不思議な気持ちだと思います(笑)
まあ、こんなテイストのinnocentもあったのだ、と広い心で受け止めてくださると嬉しいです(笑)
この秀英視点で進められたact.09-1.X代の「韓国編前編」。
この韓国編だけでなく、innocent全体を通しても、私的に大好きなセリフがあるんです。
「人を好きになることは、傷つけあうことじゃない。
とても楽しいことなんだよ。」
という秀英のセリフ。
これは永夏とヒカルだけでなく、アキラとヒカルにもいえることで、私がinnocentを書く上での根幹といえるものです。
とても当たり前のことを言っているんですけど、その当たり前のことを永夏もアキラも、そしてヒカルもなかなか出来ないんですね。
相手を好きになればなる程、傷つけてしまう。
そんなヒカルたちに対する、私を含め読者の皆様の叫び声──といえるセリフかもしれませんね。
私達の代わりに、秀英がinnocentの中で叫んでくれたのかもしれません。
だから、私は秀英が好きなのかなーと思います(^^)
ここで、「韓国編」前編は終わり。
一度2006年に戻るact.09-2を挟んで、お話は「韓国編」後半──永夏視点のお話へと移っていきます。
「韓国編」は前編(秀英視点)・後編(永夏視点)でくっきり分けたかったのですが、前編で一度だけ永夏視点(act.09-1.9-2)が出てきてしまっていますね。
アレはねー…本当は嫌だったんですけど、どーにもならず。こーゆー時、一人称って難しいですよね。
精進したいです…
で、act.09-2.1から始まる後編。
ヒカルへの行為を猛省した永夏が「ジャイアニズム炸裂主義」から「恋に努力するリリカル永夏」に変身していく話です(笑)
いやあ、こんなつもりはなかっ(以下略)
でも、結果的には良かったかなと思っています。
どうにもこうにも、ヒカルを襲ったことで永夏自身が傷ついて行き詰まってしまい、そうするとお話が動かないんですね。
だから彼に変わってもらうしかなかったんです。
「恋をすると変わる」って言うじゃないですか。乙女は。
んで、とにかくヒカルと永夏が会わなければ話が進まないので、第3回北斗杯へと舞台を移して永夏を一足先に日本へ。
この日本でキョロキョロする永夏、というのは書いていて楽しかったですね。
そしてヒカルと出会って、片言ながら日本語を覚えている永夏。
この「片言日本語」って、ウッカリするとギャグになってしまう(笑)ので、そのスレスレの部分を書くのが大変でした(笑)
永夏が日本語を覚えた理由としては「ヒカルと話すため」という彼のリリカルっぷりもあるんですけど、
それ以上に私的な理由というか(笑)
今後また永夏とヒカルが二人っきりになる話も出てくるだろう。その時に、いつまでも言葉が通じないままだと、私が書くのが大変なんですよ。倍時間がかかるので。
なので、永夏に私のために無理矢理日本語を覚えさせ(以下略) ……すんません……
第3回北斗杯act.09-2.3でのヒカルの不調。
これは病気によるものではなくて、本当に風邪、という設定にしています。
で、この時ヒカルを連れて病院に行っているのが倉田さん。倉田さんはその時にヒカルの病気のことを知るんですね。
でもヒカルに口止めをされ、倉田さんは誰にも言わないと約束をする。
そうそう、この北斗杯。
私的にはこの「団長たちの駆け引き」というのも見て欲しいところなんですね(笑)
大人同士の会話というか。選手達の子供さ(永夏やアキラも含め)を際だたせるために、団長ズはものすごく大人な感じにしています。
倉田さんとか楊海さんとかそうですね。
倉田さんの、マイペースなようで全体を見ているような、飄々とした感じは私はすごく好きです。
楊海さんに関しては、第4回北斗杯で出番の多い人なので、もう少し後でお話しましょうか。
北斗杯といえば中国選手たちの名前。……コレ、考えるのが大変でねー(笑)
なんかもう、「女子十二楽坊」とかから拝借したような覚えがあります(笑)
第3回北斗杯のポイントは、結局永夏も秀英もヒカルと対局出来なかったことにあります。
近いようで、遠い存在。そんな風に3人の関係をしておきたかったんですね。
そして永夏は、その後大学受験をします。(韓国では「大学修学能力試験」といい、通称「修能(スヌン)」というそうです)
ソウル大学というのは韓国のトップの大学で、日本での東大、みたいなものかな。
そこへ行くのも全てはヒカルために。
act.09-2.4で
「だが、楽しかった。
これだけ酷い生活を送っていても、不思議と苦にはならなかった。
それどころか、楽しかったのだ。
自分の好きな誰かのために、形振り構わず必死になって努力して。
そんな風に動く日がこのオレにやってくるなんて。
好きな人のために動くこと。
ああ、それはなんて楽しいのだろう。」
という永夏のモノローグ。
これは、彼が登場した時から「変わった」と印象づけるものでした。
これを書いた時はグッときたなあ(笑)
「永夏、大きくなって…!」みたいな(笑)母親のような気持ちでした。
今まで恋をしたことがなかったこともあって、永夏はすごく純粋なんですね。
恋の辛さで涙することもあれば(act.09-2.2)、こうして楽しさに心を躍らせることもある。
ヒネていそうで、本当はすごく純粋でポジティブな人なんじゃないかと思います。
そんな彼は、書いていてとても楽しいのでした。
そして第4回北斗杯。innocentが始まる直前に行われた北斗杯に漸くお話は戻ってきます。
この北斗杯の最初で、永夏と楊海さんが『コンピュータ囲碁』について話をしています。(act.09-2.5)
コレはね、ストーリーに大きな影響がある話でもなくて、別に入れなくても構わなかったんですが、私的に書かずにはいられなかったんですよ。原作の第一部のラストの方で、楊海さんがコンピュータ囲碁について語ってますよね(17巻)
私ねー、コレ、第2部ですごい伏線になって出てくるんじゃないかとドキドキしてたんですよ(笑)
楊海さんも好きなキャラだったし、コンピュータの世界という実体のないところから、最強の打ち手が生まれる──みたいな。実体のない佐為がsaiという名前でネット碁を打っていたじゃないですか。そーゆーところともリンクして、佐為に匹敵するくらいの打ち手が出てきて、ヒカルと対局する!!みたいなジャンプ的な展開を今か今かと待っていたんですよ(笑)
そうしたら、それよりも前に原作が終わっ(以下略)
……なので、原作で投げられてしまったカタチのこの楊海さんの『コンピュータ囲碁』を、私の中で決着を付けておきたかったんです。そんなワケで、ここで永夏を相手に語ってもらったのでした。
私としては書けて満足というか、ホッとしましたね(笑)
で、結局ヒカルは再び倒れてしまいます。
これは、病気のせいですね。この直後に大阪に行った時にもヒカルは倒れて入院していますので(act.10-5)かなり具合が良くなかったのだと思います。
この時に倉田さん、楊海さん、そして永夏という団長同士の絡み(act.9-2.9)があるのですが、コレは書いていて楽しかったなあ。
倉田さんも好きだけど、楊海さんを書くのはすごく楽しかったです。
この辺は緒方先生と通じるものがあるんだけど、「大人」なんですね、楊海さんは。
だから書いていて腕が鳴るんですよ、すごく(笑) 楊海さんの言い回しもすごく好きですね。
この一連の楊海さんのセリフは全て気に入っています。
大人キャラは書いていて本当に楽しいです。あの永夏を言い負かすことが出来るのは楊海さんだけだと思います(笑)
………ということで、韓国編は終了!!
韓国編だけで実に5ヶ月もかかるという(笑)恐ろしい長さになってしまいました。
act.09-3、4で、長かった永夏のヒカルへの恋も終局を迎えます。
この時永夏が割とすんなり「ヒカルは塔矢アキラのことが好きなんだな」と受け入れるのは、薄々感づいていたことと、彼自身もヒカルに恋をしてから本当に色々なことがあって、大人になったということではないでしょうか(笑)
この辺を読者様にナチュラルに受け入れて頂くためにも、じっくりと永夏の成長を書きたかったというのも、韓国編が長くなってしまった理由だと思います。
一旦お話はヒカルが飛び出していった直後のアキラと社へ戻ります(act.09-4.5)
この二人、act.08のラストで書いてから、実に半年近く放置されていたという(笑)アキラさんも半年ぶりのご出演なのでした。
ここで、アキラは初めて今まで見えていなかった「本当のヒカルの姿」が見えてきます。
それはまだボンヤリとしか見えていなくて、よくわからない。
でもバラバラに置かれているこの点を繋いでいくと、そこに真実が見えてくるような気がする。
そんなアキラを書きたかったのでした。
で、3人が並んで朝日を見るシーン。
これがTOPの写真のイメージですね。朝日。
この直後にヒカルが倒れてしまうことは決めていたので、ここでそれとは対照的な「昇っていく朝日」を書きたかった。
そしてヒカル自身に「いつか終わってしまったとしても、朝日が昇るように、必ず始まる日が来るのだ」ということをわかってほしかったんですね。それは、恋が終わってしまった永夏にもわかって欲しかったことでもあります。
倒れてしまう直前のヒカルが最後に見る朝日ですから、とにかく美しく、そして印象的に書きたかった。
佐為の言葉
『始まりがあれば、終わりがある。
いつかは必ず終わりがやってくる。だからこそ始まりもやってくる。
朝日が毎日昇るように。
だからこそ、世界は愛おしく、そして美しいんですよ』
これは、act.08-1のタイトルコール前の部分に繋がっていくものです。
プロダクションノートの2でも少しお話しましたね。
そして────運命の交差点。
倒れてしまう直前なので、ヒカルと永夏と秀英に、とにかく楽しそうに話をして欲しかった。
倒れた時の衝撃度を上げたかったんですね。
で、交差点越しにアキラと目が合うヒカル。
ここは、アニメの後期OP『Fantasy』の時の、『宇宙をバックにクルクルと回りながら見つめ合うアキラとヒカル』(笑)のシーンがモデルとなっています。頭の中であの絵を思い浮かべながら書きました(笑)
そして、ついに倒れてしまうヒカル。
倒れる直前に見た飛んでいく白い鳥。
コレにもモデルがあって、『新世紀エヴァンゲリオン』というアニメの第1話にそーゆーシーンがあるんですよ(笑)
文章を書きながら、やっぱり映像は常に頭の中に浮かんでいるので、こーゆー「モデルとなったシーン」というのは探せばいくつかありますね。
今まで鮮やかだった世界が、幼い頃にいた真っ白い世界へと戻っていく。(act.11-1)
最後にヒカルが
「塔矢、もう一度。
もう一度、オレの名前を呼んで。」
と言っています。
第2部の初めのact.07-8では「呼ばないで!」と言っているのにココでは「呼んで」と言っているんです。
これは第2部の大きな流れの中で、ヒカル自身にも色々なことがあって、秀英や永夏と再会して大事なことを思い出して。
やっぱり自分はアキラのことが好きなのだと再確認して。
だから、アキラには名前を呼んでほしいんです。
佐為に名前を呼んで白い世界から戻してもらったように、アキラに名前を呼んでほしいんです。
この「名前を呼んで」というのは、innocent全体にかかる大きなテーマとなる、ヒカルの大事なセリフなのでした。
そんなヒカルの願いは届くのか。
大きく動いてしまった運命に、アキラとヒカルはどうするのか。
様々な真実が明るみになって、終息へと向かって行くinnocent world。
次回は第3部についてお話していこうと思います。
あと1回、お付き合い頂けると嬉しいです(^^)

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