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皆様こんにちは! innocent執筆人のくりです。
全4回に渡りお付き合い頂いたプロダクションノートも、今回の「第3部・エピローグ」の解説で最終回となります。
あと1回、もしよろしかったら読んで頂けると嬉しいです(^^)
第2部のラストでついに倒れてしまったヒカル。
そんなヒカルの「真実」をアキラが受け入れるところから、物語はスタートします。
今まで張ってきた伏線(ヒカルの『目的』『あの場所』などについて)の消化、そしてもう何も隠すことなく、本当の意味で向き合うことになったアキラとヒカルの関係の変化、そして残された時間を必死に、共に生きることを決意した二人の辿り着いた先──などを描いた話となりました。
第3部の流れ・大まかな内容などは連載開始当初から決まっていて、脇役が予想外に活躍したために予定とは大幅にずれていった第1部・第2部とは違い、ほぼ、当初の予定通りに物語は進行していきました。
伏線の消化があったり、扱うテーマがよりデリケートで大きなものへとなっていったこと。
そして何よりも、アキラとヒカルの二人だけで進行する話が増えた──「残された僅かな時間」の中で二人が二人だけで過ごす時間が増えた、ということにあると思います。
act.10では主に「今まで張ってきた伏線の消化」「真実を受け入れるアキラ」がテーマ。
act.11は、「過酷な運命を受け入れ、乗り越え、そして前へと進んでいく」ということがテーマ。
そして最終章のact.12では、「すべてを乗り越えた先に、二人を待つもの」……というテーマでした。
エピローグは、それから3ヶ月後を描いた「その後の物語」「二人が辿り着いた先」という感じでしょうか。
この第3部は、細かい部分までもうだいぶ前から決まっていて、プロット(エピソードの流れ、登場人物などの気持ちなどを簡単な文章にして書いていったもの。脚本みたいな感じです)自体が小説とほぼ変わらないくらいに精密に書かれ(だから本文よりもプロットを切るのが大変だったんですよ…(笑))、書いている私自身も、アキラとヒカルが最後に歩んでいった軌跡を辿っているような感じで、ずっと物語を書いていました。
この第3部の二人は、私が言うのもナンですが本当に健気で(笑)私自身も書きながら大変励まされました。
そんな第3部、そしてエピローグ……順に振り返っていきましょう。

『Everything (It's you)』。
第3部は敢えて全てミスチルの曲から頂いております。
「innocent world」自体がミスチルから頂いているので、やっぱり最後は全部ミスチルでいきましょう、ということで。
有名な曲ですね。
act.10はアキラの前にすべてが明るみになるということ、そしてそこには常に、アキラを想うヒカルの姿があったということ。
……というところからこの曲を選びました。
タイトルコールは、ちょっと珍しい形なっていますね。
今までストーリー上で描いてこなかった、アキラとヒカルの日常を書いたものでした。
これは、前回の第2部ラスト(act.09-6)が、アキラや社が「進藤!」と名前を叫んで終わっているので、その続きだとみせかけて……実はアキラの回想だったという感じで。
アキラ自身が、ヒカルが倒れたことが夢なのか現実なのかわからなくなっている。混乱しているんです。
なので読者様にも同じように混乱してほしかった。アキラのように。
また、オフラインの読者様は前回より約1年の間をあけて読むワケですから、前の巻を見直して03巻を読んだ時に「アレ?え?え?」みたいな感じなって欲しかった…というのもあります。
冒頭、社との絡みの後、あかりがやって来てアキラに全てを話します(act.10-1.5)
ここでやっと第1部のact.05-4.5、そしてオフ本『innocent world sweet pain』と繋がっていくんです。
このあかりの描写は難しかったなあ……。
あかりは「ヒカルが幼い頃病気だったこと」「いつ死んでしまってもおかしくないこと」というのは、とても辛い思い出なんです。出来れば思い出したくない。もしも思い出してしまったら、またヒカルは連れて行かれてしまうかもしれない。
そんな恐怖心から、自分で自分の記憶を封じ込めていたんですね。
あかりが夢から覚めるように徐々にゆっくり思い出していって、アキラに語るのはすごく難しくて、社に上手く状況を解説してもらうのが大変でした(笑)
それから久しぶりの和谷の登場。
ここの和谷のセリフ、
「お前は囲碁を打たなくちゃいけないんだ。お前が塔矢アキラである限り。
だから進藤は、お前の傍にいたんだろ」
というのは我ながら好きですね。『ヒカルの碁』という世界を表していて。
また、こーゆーのをストレートに言えるのが、和谷のイイトコロでもあります。
この時社がしきりに
「二人に素晴らしい才能を与えた囲碁の神様は、やっぱり残酷だ」
と言っていますが、これは第1部のact.03-5で緒方が
「お前ほど残酷にはなれん」
と言っていますが(アンケートで、不思議とこの緒方のセリフを気に入ってくださっている方が多かったんです)コレとのリンクなんですよ。わかりにくいけど。
神様(佐為やヒカル)ってのは時に残酷なものなんです。
そして永夏とアキラの対局。
この二人は、北斗杯でも対局していますが、その描写を本編ではほとんど書かなかったので、いつかじっくり書きたかったんです。
で、永夏の性格を考えると、このタイミングだろう、と。
自分の気持ちに決着をつけるために。
沈んでしまっているアキラを再び引っ張り上げるために。
それをどうやって決着をつけるかというと、やっぱり囲碁しかないんですね。
そうして破れる永夏を、秀英が泣きながらフォローするシーンが、やはり私的に最大の萌えポイントだったりして(笑)
その後、病院へ向かったアキラ、社、和谷を待っていた矢部先生。
アキラは矢部先生から今までのヒカルのこと、そして本当のヒカルの気持ちを初めて聞きます。
このシーンを書くために矢部先生というキャラを作ってきた、と言っても過言ではありません。
とにかく、このヒカルにとってもアキラにとっても極限といえる状況で、何も言わずに黙って話を聞いてくれる人、そして過酷すぎる真実を優しく伝えてくれる人、が欲しかったんですね。
こーゆー状況下で、何もツッこまずにただ話を聞いてくれる人って、すごく救われると思うんですけどね。
どうかなぁ。
アキラと社の会話。(act.10-5)
ここで社の口から初めてact.01と02で、ヒカルが北斗杯直後に大阪に行った理由が語られます。
社がact.01-5.5で
「オレも仕事やし。アイツも今日はおらん。
でも明日なら。
明日ならオレは休みや。アイツもオレんとこにおる。
お前がもし平気なら会いに来たらええ」
と言っていますが、コレはヒカルが大阪で入院していたからなんですね。
アキラが大阪へヒカルの元へ迎えに来た時、ヒカルは退院した直後だったということになります。
最後に社が
「お前は悪くなんかないんやで、塔矢……」
と、社が言うシーン。
ここはact.08-5、act.09-6からのLinkでやっぱり交差点です。
なかなか私的に好きなシーンでもあります。
帰宅したアキラ。
「ただいま」と思わず言ってしまうシーン。
誰もいない家に帰ってきたはずなのに思わず「ただいま」と言ってしまう切なさ、そしてそれを出迎える猫のアキラ。
このシーンを書きたいがために、ずーーーっとアキラには帰宅する度に「ただいま」と言わせていたんです。
act.07-7、act.08-1.7、act.08-4.7がそうですね。
で、出迎えてくれるのはヒカルではなく、必ず猫のアキラなんです。
アキラの
「…………いつも僕を出迎えてくれるのはお前だな……」
というセリフは、act.08-4.7とLinkしてるんですよ。
これは先にact.10-6のこのシーンが私の頭の中にあって、このシーンを印象的に書きたいがためにずっと書き続けてきていた描写でした。
だから書けた時は感無量だったなあ(笑) 伏線(とはいえないかもしれないけど)がピタッと来た時は気持ちいいですね。書き手冥利に尽きます。
そしてアキラを抱きしめて大声で泣くアキラ。
この「猫を抱きしめて…」というのも、ヒカルがact.07-6.5やact.08-4.8で
「お前のことを抱きしめてくれる人は、抱きしめる人は、いる?」
と言ってるんですね。それとLinkさせたかったんです。
アキラを抱きしめてくれる人、アキラが抱きしめる人というのはやっぱりヒカルしかいなくて、そのヒカルがいない今、アキラが抱くことが出来るのは、ヒカルが拾ってきた猫のアキラだけなんです。
で、その温もりにヒカルの優しさや愛情を感じて、そして今日起こった全てのことに対して、大声で泣いてしまうんですね。
ここはヒカルの愛情の温かさ、アキラの悲しさと孤独さを表現したかったシーンで、連載開始当初から書こうと決めていたシーンでした。
上手く書けたかどうかはわかりませんが、無事に書けてよかったです(^^)
このact.10では、少ない話数ながら、今まで2年に渡って張り続けてきた伏線をほぼ消化させました。
あと残る2章、act.11とact.12──残された短い時間を、伏線消化に時間をとられるよりも、アキラとヒカルの二人をじっくり書きたかった、と思ったからでした。
次のact.11では、より二人の関係がクローズアップしてくことになります。

『光の射す方へ』。
これはもう……内容そのままですね。我ながら気に入っているタイトルです。
この時のTOP写真も好きでした。
木漏れ日の写真だったんですが、ベッドに寝ているヒカルが眩しいものを見上げているような写真にしたかったんです。
光の射す方へ、まっすぐに手を伸ばせるような。そんなイメージでした。
あと、小さくなっていくヒカルの命とは逆に、生命力に溢れているような、明るい写真が良かった…というのもあります。
act.11-1の冒頭で、ヒカルが自分で自分の幼い頃のことを振り返っていますね。
ここは、innocentの物語を書き始めて、ヒカルが実は病気である、という設定を作った時からずっとずっと書きたかったお話でした。
要は、2年かけて張ってきた伏線の集大成なんですね。
act.10では社やあかりが「ヒカルの秘密」という伏線を消化してくれた。
で、このact.11で満を持して、ヒカルが自ら「自分の秘密」を語ってくれるのです。
このact.11まで、ヒカルが自分自身のことをじっくり振り返って語っていることって、ほとんどないんですね。
語っても、いつも最後の肝心のところで止まってしまって、言わないんです。
そのヒカルが、漸く全てを思い出して全てを語ってくれる──という出だしに、act.11はしたかったのです。
ちなみに、タイトルコール直前の
「オレ、幸せだったんだよ。
ねえ、聞こえてる?」
は、お分かりの通りact.10-1、act.10-6のアキラの呼びかけ
「キミは、幸せだった?」
へのアンサーですね。
「ねえ、聞こえてる?」
の部分は、アキラにだけでなく、佐為や自分の母親──つまり自分の大切な人に対してヒカルは呼びかけているのです。
で、最後にヒカルは「塔矢」でも「佐為」でもなく、「お母さん」と呼びかけます。
やっぱりこの状況下で、ヒカルが一番最初に顔を思い浮かべたり頼ったりするのは、アキラでも佐為でもなく、母親だと思うんですよね。
なので、「お母さん」。
innocentを書き始めた時から決めていたし、act.11を書き始めてより一層強く誓っていたことがありました。
それは、「両親の気持ちをきちんと書こう」ということでした。
innocentはアキヒカの小説ですが、ヒカルがこうなってしまった時に、アキラだけのことを考えてアキラとだけ手を取り合って涙ながらに生きていく…というのは、絶対に嫌だったんですね。
そんなの、全然リアルじゃないじゃないですか(笑)
私も読者様も、アキヒカにリアルさを求めているワケではない。でもあまりにも「嘘」は書きたくない。
アキラとヒカルだけで世界を閉じてしまうと、お話が薄っぺらくなっちゃう気がしたんです。
だから、絶対に「両親」の存在は無視したくなかった。
むしろ、act.11の前半では前面に出して書きたかった。
ヒカルにとって、アキラの代わりはいないけれど、お父さんとお母さんの代わりも、絶対にいないのです。
ヒカルという子供を持った「両親」の気持ちをきっちり書きたかったし、それはアキラも同様で、行洋や明子さんの気持ちもact.11でしっかり書いておきたかったんです。
アキヒカを読みたい読者様には、余計なエピソードかもしれない、という不安はありました。
でも書かずにはいられませんでした。すみません。でも、読んでくださってありがとうございます。
その意味もあって、ヒカルの両親が登場するact.11-1.5(母)、act.11-3.5(父)の話は好きですね。
ヒカルの両親には、アキラと一度じっくり話して欲しかったんですよ(笑)
書けてすごく嬉しかったです。
特に父親は、どう書こうか悩みましたねえ(笑)なんてたって、原作では出てきませんから。
どんなビジュアルか、どんな人かもわからないしね。
でも多分、息子の行動に戸惑いながらも理解を示す、いいお父さんだと思うんです。
だから、あんな風になりました。いかがだったでしょうか。
ビジュアルイメージは……どうなんだろう(笑)フツーのおじさんじゃないかな。
ヒカルはお母さん似だと思うので。どうかなあ(笑)
話が少し前後しましたが、ヒカルの全ての真実が(読者様にもアキラにも)公になったところで、アキラとヒカルは病室で再会します。(act.11-1.7)
アキラとヒカルが会って話をするのは、お話の中では1日半ぶりくらいですが、読者の皆様的には実は7ヶ月ぶりくらいなんですよ(笑)
二人きりとなると……もうワカンナイ(笑)くらい久しぶりだったワケです。
なので私も力入りましたね〜(笑)「久しぶりのアキヒカだ!」って(笑)
このシーンは、「涙ながらの感動的な再会」は嫌だったんです。
どちらかというと、第1部の頃のような、ほのぼのとしているアキヒカにしたかった。
どこかトボけているヒカルと、それに対して頭を抱えながらツッコむアキラ。
act.11の後半は辛いお話が多くなってくるのはわかっていた(当然読者様にも予想がつくことと思います)ので、ここでは逆に明るいトーンにしたかったんですね。
今までドキドキして二人の再会を皆様も待たれていたと思うので、一息つく意味でホッとして欲しかったのと、この後に待つ、辛いお話との落差を出したかった、というのもありました。
二人がただ、何もせずに抱き合うシーンは、とても神聖なものしたかったんです。
色でいうと、青っぽい感じの空間で。
いかがでしたでしょうか。
その後、様々な見舞い客が訪れます。
この時にクリスマスの描写を少し書いていますが、それを膨らまして番外編にしたのが『Last Christmas』というオフラインの本なんですよ。
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〜こぼれ話〜
++++++++++++++++
で、その後、荒れるアキラさん。(act.11-3)
荒れて当然ですよねえ。逆に平静を保っている方がオカシイですもん。
この辺のアキラの心情は、イベント限定でお配りした『アキラの日記』(で少しだけ書きました。(web拍手で少しだけ読むことが出来ます)
また、この時ヒカルをイタしてしまうワケですが(笑)実はコレにはナイショの伏線がありまして。
オフライン本「innocent world 02」巻を買ってくださった方に、オマケとして、巻末に『アキラとヒカルへの100の質問』といういわゆる「なりきり100質」を書き下ろして掲載したんです。
その100質、前半50問はフツーの質問なんですが(例えば『相手のどんなところが好き?』とか)、後半50問はちょっとエッチな質問なんですね。(『初エッチはどこで?』とか(笑))
その質問の中に
『今までエッチした場所で一番スリリングだったのはどこ?』
というのがありまして、以下↓2人の答え
ヒカル「病院」
アキラ「……! あ、アレはそのっ…」
ヒカル「ヘヘヘ」
と答えているんです。
実はこの100質を書いたのは2005年の春で、当然act.11-3よりも全然前の話。
それどころか、そんな「病院でヤる」なんてエピソードも考えていなかった。
でも本編を書く前にウッカリそう100質で書いてしまったので、「こりゃいかん!」と(笑)
ということで、あのよーなシーンを入れたんです。
ホントはね、あんな痛々しいエッチじゃなくて、色っぽい感じにしたかったんですよ!
でも入れるにはこのタイミングでしかなかったので、ちょっとヒカルには可哀想な話になってしまいましたね。
ごめん、ヒカル(笑)
この100質、innocentが終わった今、読んでみるとなかなか興味深いことが書かれています。
ここでも結構さりげなく伏線張ったりしてたんですよ(気付かれなかったけど)
アキラとヒカルが結構赤裸々(?)に色々なことを語っていますので、「innocent world 02」をお持ちの方は、是非読んでやってください♪
(注:02巻には前半50問しか載っておりません。後半のエッチな質問50問は、02巻に記載されているアドレスまでアクセスしてみてください。特設ページに行くことが出来ます。)
その後、なんとか仲直りした2人は本妙寺へ。
act.12で因島に行くことは決めていたので、東京の本妙寺はact.11で行こう、と。
act.01-4で、電車の中で2人が話していた伏線の消化です。
実は私も涼子も東京に住んでいながら、本妙寺には行ったことがないので(因島には行ったのに…)、いつかちゃんと行きたいと思っています。
お墓参りしたいです。
で、帰ってきたヒカルは再度倒れてしまう。
この倒れる瞬間の描写(act.11-4)は難しくて難しくて……苦労しました。「空間が歪む」感じを書きたかったんですね。
この、思いっ切り「引き」で終わったこの話の後の読者様の反応が凄かったので、皆様がヒカルを心配してくださっているのがわかってホロリとしました(笑)
act.11-5で初めてヒカルは、アキラに対して
「死にたくないよ」
と叫んで泣きます。やっと本音が出た、という感じでしょうか。
この辺りの話が、一番ドン底に当たる話で、書くのも辛かったです。
「早く! 早く次を書いて浮上させてあげたい!」と思ったものでした(笑)
ズーン…と落ち込んでしまうアキラの元に訪れた国際棋戦の話。
行洋とアキラを対局させたいとずっと思っていて、それに相応しい場所は、やっぱり今行洋が活躍している海外だろうなあ、と。で、韓国を舞台にさせてもらえれば、永夏や秀英も出すことが出来るし。……ということで国際棋戦にしたんです。
で。
この後から続くact.11-6、7、8。
これを私は『三部作』と呼んでいまして(笑)innocentを書き始めてずーっとずーっとずーーーーーーーーっと書きたかった話でした。
ヒカルの元に、行洋、芦原、桑原が訪れて、落ち込むヒカルを囲碁の世界へと引き戻す話ですね。
これは本当に書きたくて、これのためにact.11を書いてきたといっても過言ではないくらい、私の中で重要な話でした。それに、この『三部作』が、ちょうど第3部の中間地点くらいにあたるんです。
ここで折り返し地点を迎えて、あとは終息へ向かってのラストスパート。
そういった意味でも、大変思い入れの強いお話でした。
行洋が訪れるact.11-6。
これは、原作の14巻で、佐為とネット碁を打った後の行洋が、ヒカルに「この身がある幸福」について話をしていますね。
「この身さえあれば、プロ棋士でなくても碁はいつでもどこでも打てるのだ」と。
で、そう思った行洋は引退して、海外を飛び回り、自分の打ちたい碁を打って高みを目指していく。
世界中の強い人々と碁を打ち続けていた行洋は、きっとまた新たなことを悟るだろうと思ったんです。
「この身がある幸福」よりも、さらにもっと「高み」に近づいたことを。
それがヒカルの
「ねえ、先生。オレは、何のために死んでいくのかな」
という、いわば「究極の問い」に対する答え
「キミが死んでゆくのは──『進藤ヒカルの碁』を残すため──ではないかな」
「キミがこの世に生まれて、そして残してきた一局一局にはすべて意味がある。
囲碁の道に残る一局として。
そしてそれは、いつまでも消えることなく残り続ける」
「私の中に。……アキラの中に」
「だから、最後まで後悔のないように──生きなさい」
……と。
私の拙い言葉で申し訳ないのですが、きっと塔矢先生ならこんなことを言うんじゃないかな、と思ったんです。
ヒカルが自分の「死」を身近に感じ、そしてそれに対して疑問を持った。
行洋は決して「そんな死ぬなんて言ってはダメだ」とか「大丈夫、なんとかなるよ」とか「頑張れ」とか、無責任なことは絶対に言わない人だと思うんです。絶対に。
「死」を否定しない。
ヒカルが既に自分にいずれ訪れるであろう「死」を受け入れるべきか否か、というところにいるのだから、自分はそれに対して、棋士として、そして一人の人間として誠実に答える必要がある。
……なんて考える人なんじゃないかなーと思っています。
芦原のact.11-7。
これは、まだ第1部でバカな芦原を書いている頃(2年前!)から、涼子に対して「芦原さんは第3部でスゲーことするから」と言い続けてきたキャラでした。「絶対に芦原さんじゃないと出来ないことをするんだ」と。
それがこの話。
アキラの夢をヒカルに伝え、アキラのために土下座をするんです。
これは、芦原さんにしか出来ないことなんですよ。
アキラの本当の夢を知っているのも。そしてそんなアキラのために土下座でもなんでも出来るのも。
芦原さんしかいないんです。
ヒカルと知り合うまで、アキラにとって一番近しい人は芦原さんだっと思うんですよね。
口ではアキラは芦原のことをバカだアホだと言っていますが、それも親しみの表れなんですよ(笑)
芦原もアキラのことを、とても大切に思っている。本当に自分の弟のように思っていると思うんです。
だから、今自分が出来る事は何か。そう考えた末の行動なんですよね。
それ以外にも、この、ウッカリ隣の部屋にいてウッカリアキラの国際棋戦の話を聞いちゃう、みたいな「タイミングの悪さ」も芦原さんならでは、だと思うんです(笑)
そして真打ち登場、桑原先生(笑)のact.11-8。
これはねー、なかなか反響を頂きましたねー。
「桑原先生、超カッコイイ!」「なんか大好きになっちゃいました」とか(笑)
涼子も好きみたいです、この話。
この日(2月15日)、ヒカルの元にはお昼過ぎの行洋→夕方の芦原→夜中の桑原、と見舞い客がたくさん訪れているんですよね。
桑原先生は「月夜」のイメージだったので、一番最後のご訪問にさせて頂きました(笑)
そしてその月光を浴びながら語る桑原先生。
この人も行洋と同じで、ヒカルの病や死を否定しない。
でも行洋以上に「死ぬ以外に、お前にはもっとやることがあるだろう」と言う人なんです。
アキラが行洋に挑戦するように、ヒカルには最後に佐為の──本因坊の名前に挑戦して欲しかった。
だから、それには現本因坊の桑原先生自ら、沈んでいくヒカルを引っ張り上げて欲しかったんです。
「本因坊秀策の名が欲しければ、このワシのところまで這い上がってこい」
と語る桑原先生を書けた時には、さすがに私自身もシビレましたね(笑)
カッコイイ……!!!!
innocentの中の「執筆人的名シーンベスト10」(何ソレ)に入るくらいに!(笑)
そうして囲碁を再び打つことを決意したヒカルは、アキラを引っ張り上げます。
このact.11-8.5まで、ずっと沈んでいるヒカルを書き続けてきたので、この「明るくて強いヒカル」を書けた8.5は気持ちよかったです。
ヒカルが元気だと、筆の進みも早いんですよ。楽しかった!
act.11-8.5の最後、二人で夜空を見上げて「一緒に夢を叶えよう」というシーン。
これはいわゆる「誓い」のシーンですね。
結婚式で言うところの「アナタは誓いますか?」の誓い。それ程、私の中で重要なシーンでした。
この「誓い」が第3部全体のターニングポイントになっていて、ここからお話は折り返し地点を曲がり、ゴールへと向けて走っていくことになるのですから。
行洋から始まった『三部作』、そしてこの『誓い』のシーンまで書けた時は、さすがにちょっと達成感がありました。
そして始まる本因坊戦、国際棋戦。
ここから先の話はヒカル視点でヒカル中心に書きたかったので、アキラの国際棋戦はほとんど描写をしませんでした。(この国際棋戦の出来事やアキラの気持ちは『アキラの日記』に書きました)
ヒカルの復帰初戦、相手は森下先生(act.11-9)。
これはね、第3部の中でも唯一の予想外エピソードですね。これはプロットにもなくて、書きながら考えていったんですよ。
書くときになって、急に出てきたんだもん、森下先生(笑)
ヒカルが「ここから本当の『ヒカルの碁』が始まるんだ」と決意をして臨む一局ですから、相手はそれに相応しい人にしたかった。
それが、森下先生だったんですね。
もしかしたら、弟子のピンチに黙っていられなかったのかもしれません。
最終局で打つことになる緒方戦への援護射撃をしてくれたのも、森下先生でしたね。
書けてよかったです(^^)
ちなみにこの「本因坊予選リーグ」を書いていた時の私の脳内BGMは「Get Over」でした。
よく日記でナーナーと歌っていた時があったのですが、ちょうどこの辺を書いていた時だったんですよ(笑)
そして最後の緒方先生。
やっぱりヒカルにとって緒方先生はちょっと特別な人で、他の棋士とは違うんですね。
最後に佐為と打った人でもあるわけだし。
そして本因坊にこだわりを持つ人でもあるから、絶対にヒカルも緒方先生と打って欲しかった。
対局中の描写はしませんでしたが、終わった後の緒方先生の言葉が、すごく彼らしいですよね。
「そう、オレは執念深いんだ。
来年、本因坊になったお前に絶対にリベンジしてやる。だから、絶対に勝て」
素直に「強かったぞ」とか「頑張れ」とか言わないところが、緒方先生(笑)
彼も書いていて楽しかったキャラでした。
act.11の最後、act.11-12。
秀英のメールで始まります。秀英のメールはact.11-3でも書きましたが、この彼とヒカルの書簡というのは、innocentの最後を飾るエピローグの冒頭への伏線です。
エピローグは、元から秀英にしめてもらうつもりだったので、そこで違和感なく秀英の手紙を出せるように、この頃から二人はメールや手紙のやりとりをしていた、という風にしたんですよ。
ああ、ヒカルとアキラの日記というのをイベント限定で出しましたが、秀英とヒカルの書簡集とかも出してみたかったですね(笑)
私、手紙とかメールの文章書くの好きなんですよ。秀英になりきってメールを書くの、大変楽しかったです(笑)
そして最後、二人はact.11-8.5と同じように月の光の下で、「夢を叶えよう」と誓い合います。
アキラから「3日間だけ休みがある」と聞いたヒカルは、アキラに「最後のお願い」をして、2人は因島へと旅立つことになります。
最後のヒカルのナレーション
「オレはずっと忘れない。
二人で過ごした、あの日々を。」
を書き終わった時には、さすがにグッときました。
ヒカルの、エピローグ以外のモノローグは、ここが最後でしたからね。
「ここまで来たか…」という気持ちで一杯でした。
そしてこのact.11-12をwebに掲載した直後、私と涼子はアキラやヒカルよりも一足先に因島へと取材に行きました(←取材レポ参照)
act.12でガッツリ因島を書くつもりだったので、実際にその空気を吸ったり、道を歩いたりしたかったんですね。
この「アキラとヒカルの旅立ち」と私達の取材旅行が重なったのは偶然で、私達自身も驚いた記憶があります(笑)
ちなみに。
この秋から冬、そしてこの2006年の春まで、innocentのスケジュールはほぼ確定しており、私はこの頃からかーなーり前倒しで執筆を続けていたんですよ。
実はですね、冬コミに発行した『Last Christmas』は、なんと夏コミ直後の9月5日には書き終わっていました(笑)で、act.11をすべて書き終えたのは9月21日。掲載より1ヶ月前だったんですね。
そして冬コミで出したinnocentとは関係のないヒカ碁平安本『願わくは花の下にて』を納品したのは10月8日。
んで、ちょうどこの頃「読者様感謝企画!」として『innocent world another storys』の投票企画をやっていて、すぐにその読み切りを書かないといけないこともわかっていたので、とにかく焦っていたんです(笑)
で、『願わくは〜』の後から番外編を書き始め、その後が我ながら驚異的で(笑)
10月14日に緒方の『HIGH PRESSURE』、
10月の月末に因島取材、
11月2日に三谷の『dragons' dance』、
11月10日に永夏の『Can You Keep A Secret?』
12月10日頃から、最終章のact.12を連載開始。
……といったスケジュール&スピードで書き上げていったという…(笑)
だから、冬コミ合否の前には冬コミの原稿(データだけ)は出来てたんですよ(笑)
ま、そこから実際に本にする作業が大変なんですが(笑)
さらにいうと、実はact.12とエピローグは2006年1月末には書き上がっており、2月のアキヒカオンリーで皆様にお会いした時には、すでに書き終わっていたのでした(実はあの頃が脱稿したてで、一番ヘロヘロだった・笑)
なんでこんな前倒しで進めているかというと、「innocent world 03」に大量の書き下ろし付録を付けることは2年くらい前から決めていたので、すべてはそれに備えるために、前倒していたのでしたー。(そしてそれは今現在(2006.4.22)も続いている…)
少し話が逸れましたが(笑)
そうして物語は最終章、act.12へと突入していきます。
act.12は上記↑の密接なスケジュールの中で書かなければならなかったので、書き始める前からすでに話数も決めていました。
エピローグ含めて全15話。
2006年3月末に連載を終わらせるつもりで、話数を計算しながらプロットを作って、書き進めていったのでした。
……と。
ちょっと…思ったより長くなりすぎてしまいました(汗)
なので、一旦区切って、最後のact.12とエピローグは、また次回にしましょうか(^^;)
さらにもう1回増えてしまいましたが、act.12とエピローグのお話を聞いてみたい方は、是非また次回も読んでくださると嬉しいです。

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